ポーラスコンクリートの
空隙率測定方法に関する研究

中川 武志

1. 空隙率をより精度よく測定するために
 ポーラスコンクリートの優れた機能性は、その内部の空隙の特性に大きく依存します。本研究は,ポーラスコンクリートの空隙率を適切に把握することにより、施工・品質管理を確立し、ポーラスコンクリートの適用拡大を図ることを目的として、
@空隙率の考え方の検討と再整理
A各種空隙率測定方法の比較
B新しい空隙率測定方法(容積圧力法)の提案
C従来の方法の精度向上策(遠心脱水処理)の提案
などについて、研究を進めています(
図1)。

2. 空隙の分類と定義
 ポーラスコンクリートの空隙をその連続性に応じて3つのレベルに分類します(
図2表1)。

 連続空隙率:供試体表面からみて連続している空隙であり、容易に水で飽水・排水される空隙
 準連続空隙率:連続した空隙と考えられるが、飽水・排水するには若干の時間を要する空隙
 独立空隙率: 供試体表面からみて完全に独立している空隙

3. エアメータを応用した容積圧力法
フレッシュ時のポーラスコンクリートに対する空隙率測定の考え方を、硬化後の供試体に応用します。この方法を、容積圧力法と呼びます(
図3)。見かけの容積を測定した後に供試体を容器に格納し、試験器上部を組立てて注水した状態で、供試体を入れる前後の質量の差から供試体の固相容積を求め、このときの空隙率を連続空隙率とします。空気量に関しては試験容器の容積に対する比率(%)が表示されるので、供試体の見かけの容積に対する比率に換算し、準連続空隙率とします。
この容積圧力法は、以下のようなメリットがあります。
1) 小粒径を含むポーラスコンクリート全般に適用できる。
2) 高い測定精度が期待できる。
3) 連続空隙率と準連続空隙率を同時に測定できる。
4) 簡便で,かつ短時間に測定できる。

 図4に、硬化後供試体(φ100×200)について、容積圧力法、質量法、容積法による全空隙率測定結果の比較の例を示します。グラフの横軸を(現時点で全空隙率に対しては最も測定誤差が小さいと考えられる)フレッシュ時の質量法による全空隙率の測定結果としています。設計空隙率を横軸にすると、供試体型枠の表面効果や締固めの影響により、硬化後の空隙率との相関が不明瞭になる傾向があります。
 
各測定方法の傾向を見ると、容積圧力法と質量法によるデータのばらつきが小さく、これに対し、容積法ではデータのばらつきが大きいことがわかります。これは、供試体によっては水中浸漬および気中放置の過程で含水量が安定しないことによると考えられます。測定値の大きさに関しては、硬化後の質量法による値がフレッシュ時の結果とほぼ同程度となるのに対して、容積圧力法は大きめの、容積法は小さめの値となる傾向がみられます。この原因としては、容積圧力法では脱型後にそのまま気中質量を測定した場合に、供試体が表乾状態と比べて、わずかに乾燥しており、空隙率が大きく測定されたことが考えられます。また、容積法で空隙率が小さく測定される傾向は、既往の研究結果1)と同様です。

4. 供試体の脱水処理による測定方法の改善
 従来、質量法および容積法による空隙率測定においては、気中質量測定の前に、24時間の水中浸漬とそれに続く24時間の気中放置を行うこととされています2)。しかし、これらは時間を要する上に、特に小粒径ポーラスコンクリートにおいて、水中浸漬および気中放置の際に供試体の含水状態が安定しないことにより空隙率測定結果の精度が低下すること1)がわかっています。この問題を改善するために、市販の洗濯機の脱水槽(直径350mm、回転数800rpm、約7分)を用いて、供試体の遠心脱水処理を行いました。
図5は、容積法について、気中放置の場合と脱水の場合を結果との比較の例を示します。気中乾燥した供試体はデータがばらついているのに対し、脱水処理を行ったデータではばらつきが小さくなっており、脱水処理が空隙率の測定精度改善に対して有効であると考えられます。

【参考文献】
1) 前川明弘,山本晃,三島直生,畑中重光:小粒径ポーラスコンクリートの空隙率測定方法に関する研究,第60回セメント技術大会講演要旨,pp218-219,2006
2) ポーラスコンクリートの設計・施工に関する研究委員会:同報告書,日本コンクリート工学協会,pp.179-180, 2003
3) 中川武志,三島直生,畑中重光,湯浅幸久,前川明弘:空気量試験器を応用したポーラスコンクリートの空隙率測定方法,日本建築学会構造部門論文集(2008年7月掲載予定)

図1 空隙率の測定に関する研究フロー
図2 ポーラスコンクリートの空隙とその分類
表1 ポーラスコンクリートの空隙の分類
図3 容積圧力法の測定状況
図4 容積圧力法,質量法,容積法による測定結果
図5 供試体脱水の効果(容積法)